AI翻訳の問題点と解決方法

特許翻訳での注意点

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更新日時:

01

AI訳は、一見、非常に良く見えます。

なぜなら AIは、

  1. 平易で、
  2. 文法ミスが無く、
  3. 読みやすい

文章を「生成」するからです。

しかし、生成された訳文の内容には、重大な問題点が潜んでいます。
正しく使いこなすには、この問題点を知っておく必要があります。

02

AI翻訳の問題点

1. 一対一対応の欠如

同一の英単語には同一の訳語を割り当て、異なる英単語には異なる訳語を割り当てなければなりません。

しかし、個々の英単語には、複数の、いずれも正しい訳語が存在します。そのため、AI翻訳や翻訳メモリを活用した翻訳では、この「一対一対応」を維持することが困難です。

2. AIは誤った説明を作り上げる

AIは、技術自体を理解しているわけではないため、誤った説明を捏造します。

文章として流暢に見えるように訳文を調整し、技術的意味を変えてしまいます。

+

ケースで見る「一対一対応の欠如」

特許翻訳では、ある日本語用語に対して毎回同じ英語をあてるだけでは不十分です。 クレームと明細書の対応関係や、同一案件内に登場する他の要素との切り分けまで見ないと、 訳語の割り当てが崩れ、権利範囲の理解まで変わってしまいます。

Case 1

「一対多」の問題

訳揺れ

クレーム中・・・「机」を「desk」と訳した。

明細書中・・・「机」を「desk」と「table」に訳した。

クレーム中

「机の端部に固定される取付部」

"a mount fixed to an edge of a desk"

明細書中

「装置は、クランプ式取付部を介して机に固定される。」

"The device is fixed to the desk via a clamp mount."

「センサーは、机を介して伝達される振動を検知し」

"The sensor detects vibration transmitted through the table"

裁判所は、用語が異なれば、原則として、異なる要素として把握するので、 クレーム中の「desk」は、明細書中の「desk」の説明のみから理解されます。 「table」と訳された箇所の説明が無視されるので、 権利範囲が変わってしまいます。

Case 2

「多対一」の問題

限定解釈

クレーム中・・・「机」を「desk」と訳した。

明細書中・・・「机」と「デスク」をどちらも「desk」に訳した。

クレーム中

「机は、重量物を設置するために使用され」

"the desk is used for placing heavy objects..."

明細書中

「デスクには、ワークスペースが設けられる。」

"the desk provides a workspace"

「机」と「デスク」の両方の説明により、「desk」が限定解釈されてしまいます。

特に、翻訳メモリを使用した翻訳では、以下のような問題が発生します。

過去案件:「机」を「desk」と訳していた。(その案件内では適切だった。)

本件:「机」の他に、「机」とは異なる「デスク」も登場する。

この場合、「デスク」には「desk」を割り当て、「机」には異なる訳語(例: 「table」)を割り当てる必要があります。

ある用語にどの訳語を当てるべきかは、他に登場している要素によって変わるので、案件ごとに適否を判断する必要があります。

03

一対一対応の欠如:訳揺れ

原文1

集光部は、おもて面に対して垂直に入射する光を集光する光学要素である。」

AI出力1

The light-collecting unit is an optical element that collects light incident perpendicular to the front surface.

原文2

集光機構により、入射光を検出素子上に高効率で集束させる。」

AI出力2

The light-condensing mechanism efficiently focuses incident light onto the detector.

解説

原文1及び原文2の「集光」は、同じ現象(入射光を集束させる)を指します。しかし、それぞれ「collect」及び「condense」という異なる英単語に訳されています。特許庁及び裁判所は、これらがそれぞれ異なる意味を持つと解釈する可能性があります。

解決方法:翻訳者が、特許翻訳におけるその重要性を理解し、訳文を校閲して翻訳の一貫性を保証する必要があります。

04

AIは誤った説明を作り上げる:単複の誤り

原文

左右配列におけるコーナーセンサーによって隣接するパネル10間の位置ずれがリアルタイムで検知される。」

AI出力

“A corner sensor in a lateral array detects, in real time, a misalignment between adjacent panels 10.”

修正後

Corner sensors in right and left arrays detect, in real time, a misalignment between adjacent panels 10.”

解説

「左右配列」は、左右方向(lateral)に連なる1つの配列ではなく、パネル10の左右縁部にそれぞれ配置された2つの配列を指しています。日本語の名詞は単複を区別しないので、単数形と複数形のどちらに訳すべきかを、単語のみからは判断できません。

解決方法:翻訳者が、技術的理解に基づき、全文にわたって単複を確認し修正する必要があります。

図(左右配列の概念)

左配列 右配列 10 10 10 10
05

AIは誤った説明を作り上げる:構文の誤解釈1

原文

ブリッジ10は、2つの平坦部材を備え、上流側を昇降自在に構成し、下流側を固定して水平に配置されている。」

AI出力

“The bridge 10 includes two flat members, wherein the upstream side is configured to be liftable, and the downstream side is fixed and arranged horizontally.”

修正後

“The bridge 10 includes two flat members and is arranged horizontally, wherein the upstream side is configured to be liftable and the downstream side is fixed.”

解説

水平に配置されている」の主語は、「ブリッジ10」であり、「下流側」ではありません。

解決方法:この誤訳を修正するには、翻訳者が図面を参照して発明を理解する必要があります。

06

AIは誤った説明を作り上げる:構文の誤解釈2

原文

レーザは、X軸に対して傾斜するように投光されてもよく、」

AI出力

the laser may be emitted to be inclined with respect to the X-axis

意味

「レーザは、投光されることで(又はその後)X軸に対して傾斜してもよい」

修正後

the laser may be emitted at an angle with respect to the X-axis

意味

「レーザは、X軸に対して傾斜した方向に投光されてもよい」

解説

図の左側から投光されたレーザ(オレンジ)は、X軸に沿って右側の光学要素に投光されます。

解決方法:この誤訳を修正するには、翻訳者が図面を参照して発明を理解する必要があります。

図(X軸に対する関係)

X軸
07

AIは誤った説明を作り上げる:構文の誤解釈3

原文

「搬送装置は、物品がY方向にコンベアから受け取られるように設けられた受取位置を有する受取部を備え」

AI出力

“the conveying apparatus includes the receiving section provided such that an article is received from the conveyor in the Y direction and having the receiving position

修正後

“the conveying apparatus includes the receiving section having the receiving position provided such that an article is received from the conveyor in the Y direction

解説

緑色の修飾先は、「受取位置」であり、「受取部」ではありません。

解決方法:原文は、どちらの解釈でも正しい可能性があります。翻訳者が、技術的理解に基づいて、係り受けを検証して修正する必要があります。

08

AI翻訳の問題の解決方法

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