盲点① 用語の「多対一」問題
過去案件で「机」を「desk」と訳した翻訳メモリを持っている場合、新しい案件で「机」と「デスク」が両方登場しても、両方「desk」と訳されてしまいます。
新しい案件では、「机」と「デスク」は別の構成要素であり、異なる訳語を割り当てなければなりません。しかし翻訳メモリは、この案件固有の文脈を判断できません。
実務解説
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翻訳メモリ(TM)やCATツールは、翻訳業界で広く使われているツールです。「過去の翻訳を再利用することでコストと時間を削減できる」として、多くの翻訳会社が採用しています。
しかし、特許翻訳における翻訳メモリの使用には、メリットと同時に見過ごせない盲点があります。本記事では、その両面を整理します。
翻訳メモリとは、過去に翻訳した文とその訳文をデータベースとして蓄積し、新たな翻訳作業時に類似した文を再利用するシステムです。同じ文、類似した文が繰り返し登場するマニュアルや契約書などでは、大幅な効率化が期待できます。
盲点① 用語の「多対一」問題
過去案件で「机」を「desk」と訳した翻訳メモリを持っている場合、新しい案件で「机」と「デスク」が両方登場しても、両方「desk」と訳されてしまいます。
新しい案件では、「机」と「デスク」は別の構成要素であり、異なる訳語を割り当てなければなりません。しかし翻訳メモリは、この案件固有の文脈を判断できません。
盲点② 用語の「一対多」問題
逆のケースとして、ある過去案件では「机」を「desk」と訳し、別の案件では「机」を「table」と訳していたとします。新しい案件で「机」と「デスク」という2種類の用語が登場した場合、翻訳メモリは「机」を「desk」と「table」の2通りに訳す可能性があります。
この場合、同一の要素が異なる訳語で表現されることになり、権利範囲の解釈に問題が生じます。
盲点③ 技術的文脈の判断ができない
翻訳メモリは、テキストの表面的な一致を基準に再利用を行います。同じ単語でも技術的な文脈によって訳語が変わるべき場合、翻訳メモリはこれを判断できません。
特許翻訳では、各案件の技術、発明の構成、用語の使われ方を全体的に把握した上で訳語を決定する必要があります。これは翻訳メモリが苦手とする判断です。
翻訳メモリは、特許翻訳の効率化に貢献できるツールです。しかし、翻訳メモリの使用がそのまま品質の担保を意味するわけではありません。
発注者として確認すべきは、翻訳メモリをどのように管理、運用しているか、そして人によるチェックがどのように機能しているかです。「翻訳メモリを活用しています」という説明だけで品質を判断することには注意が必要です。
AI PatentTrans. では、翻訳メモリの活用と人による品質チェックを組み合わせ、案件ごとの用語管理を徹底しています。